若手が離職する現場・定着する現場、その共通点

──建設業の未来を左右する“環境づくり”とは?──
建設業は慢性的な人手不足と言われていますが、
もっと深刻なのは 「入ってもすぐ辞めてしまう」 という離職問題です。
しかし一方で、
まったく辞めない会社や、若手がどんどん育つ会社も存在します。
この“差”はどこから生まれているのか?
本コラムでは、実際の現場の声・若手の心理・会社の体制をもとに
若手が離職する現場、定着する現場に共通するポイント を深掘りします。
1. 若手が離職する現場に共通する“3つの特徴”
若手が辞めてしまう現場には、ほぼ必ず同じ構造があります。
これは業種問わず共通している傾向です。
① 怒鳴る・否定する“昭和型指導”が残っている
今の若い世代は、怒鳴られることを極端に嫌います。
耐えられない、ではなく
“怒鳴られる職場は働く価値がない”
と判断して辞めます。
・いきなり怒鳴る
・理由を説明しない
・失敗を許さない
・人前で叱る
・罵声・暴言が日常
これらが一つでもあると、若手はすぐ離れます。
「最近の若者は根性がない」という声もありますが、
それは時代の変化を理解できていないだけです。
② 教え方が“属人的”で、育てる仕組みがない
若手が辞める現場の特徴は、
教育が “教える人によってバラバラ” という点です。
・Aさんは優しい
・Bさんは怖い
・Cさんは放置
・Dさんは丸投げ
これでは若手は不安になります。
そして大きいのが、
“何をできれば一人前なのか” が見えないこと。
目標が見えないと、
「自分は向いてないのかも」
「ずっと怒られるだけの仕事なの?」
となり、辞めてしまいます。
③ 現場や会社の“雰囲気が暗い”
若手は雰囲気に非常に敏感です。
・挨拶がない
・会話がない
・みんな機嫌悪そう
・余裕のない現場
・ミスが多くピリピリ
・休憩中も空気が悪い
こういう現場は、若手の心をすぐに折ります。
若手は能力ではなく “雰囲気” で判断するのです。
2. 若手が定着する現場の共通点とは?
逆に、若手が長く続く会社や現場には
明確な共通点があります。
① 褒める文化がある
若い職人が最も求めるのは
「自分を認めてくれる大人の存在」 です。
・ナイス!
・うまなったな!
・昨日より早いやん
・それ助かったわ
この一言で若手のモチベーションは爆発的に上がります。
厳しさは必要ですが、
“褒める”と“叱る”のバランスが取れている現場は辞めません。
② 仕事の流れ・目的を丁寧に説明する
若手が辞めない会社は、
“なぜこの作業が必要なのか” をきちんと説明します。
・今日はこの作業
・この工程の目的
・ここは危険だから注意
・これができれば次のステップ
・最終的にはこういう仕事を任せる
この“ストーリー”があるだけで、若手は安心します。
説明ゼロの現場は
「毎日怒られるだけの意味不明な仕事」
に感じられてしまいます。
③ 現場の雰囲気が明るい・仲が良い
結局のところ、一番若手が定着する理由は
“居心地の良さ” です。
・挨拶がある
・休憩中が明るい
・先輩同士が仲良い
・冗談が飛び交う
・若手との会話もある
・現場に余裕がある
若手は「人」で職場を選びます。
給料や休みよりも、
“この人たちと働きたいかどうか”
を重視しています。
3. 若手が定着する現場をつくる“3つの戦略”
では、どうすれば定着率の高い現場がつくれるのか?
以下の3つが最も効果的です。
① 教育の仕組み化(動画マニュアル・段階表)
若手教育を属人化しないためには、
見える化された教育フロー が不可欠です。
・作業動画
・写真マニュアル
・段階ごとの目標
・職長の判断基準の共有
・安全ポイントの一覧化
「何をできれば一人前か」が明確な会社は
若手が圧倒的に辞めにくくなります。
② コミュニケーションの質を改善する
若手が最も離職する原因は“人間関係のストレス”です。
対策はシンプル。
・怒鳴らない
・感情で叱らない
・ミスの理由を一緒に考える
・先輩が話しやすい空気をつくる
これだけで離職率は大幅に下がります。
③ SNSで“良い雰囲気”を発信し、応募段階から安心させる
若手は応募前にSNSをチェックします。
つまり、
SNSは採用だけでなく定着にも効果がある のです。
・現場の楽しそうな様子
・先輩の優しい雰囲気
・作業の丁寧さ
・休憩中の柔らかい空気
・帰りの車内の会話
これらが見えると、入社前の不安が軽減されます。
入ってからギャップが少ない会社ほど、若手は辞めません。
最後に:若手が辞める会社と残る会社の違いは“雰囲気”に尽きる
若手が離職する理由はスキルではなく、
心理的な不安・人間関係・暗い雰囲気 です。
逆に、若手が定着する現場は
褒める文化・丁寧な説明・明るい空気
という共通点を持っています。
つまり、
若手定着の本質は
“働きやすい環境づくり” にあります。
建設業はこれから10年、
若手の奪い合いがさらに激化します。
だからこそ今、
辞めない仕組みづくりが最大の経営戦略 です。
若手が育ち、残る会社だけが、
これからの建設業界で強く生き残ることができます。

